■1泊2日の旅
今はもう潰れてなくなってしまいましたが、
私が若いころ可部の太田川の河川敷にある旅館に宿泊した時の話です。
気の知れた友人数人と泊まりました。
いたって普通の旅館でこれといった特徴もなく、どこか民宿のような感じさえしました。
この宿に泊まることになった理由は、夏ということもあって、
川に面している場所(徒歩2分)であり、温泉が広いというところでした。
日中は河原でバーべキューをしたり、川の中に入って水浴びをしながら遊んでいました。
日中さんざん遊んで疲れ切った体を旅館自慢の大きな浴槽に身を浸しながら疲れを流しました。
夕食も終えて、夜10時頃になったので各自が自分の部屋にもどり、
和室の部屋で布団を敷いて寝ることにしました。
■夜になって、私の名前を呼ぶ声
とても暑い日でクーラーがなかったので扇風機を回して寝ることにしました。
布団に入り間もなく聞きなれた友人の声が聞こえてきました。
その友人が私の名前を呼ぶのです。
部屋には私の他にはおらず、部屋の入り口のほうから聞こえてくるのでした。
「〇〇君、〇〇君」
この声の友人は、今回の旅をキャンセルして自宅にいるはずなのに、おかしいなあと
最初は特に何も考えずに、空耳かなと思っていました。
しばらくすると、また私の名前を呼ぶ声がします。
「〇〇君、〇〇君」
普通に、呼んでいるので、本当に入口にいるように思いました。
さすがに2回目に名前を呼ばれたときには、これは変だなと思いました。
この時は恐怖感はなく、おかしいことがあるものだなと考えながら、また眠ろうとしました。
うとうととしてきました。
これでゆっくり眠れそうだと思ったとたんに、
聞きなれない声が私のいる和室の中なら声がしてきました。
それも一人ではありませんでした。
数人が、いっしょに私の布団の周りにきて、名前を呼ぶのです。
「〇〇君、〇〇君」
「〇〇君、〇〇君」
この時は何度も何度も呼びかけられました。
私はただただなにかおかしいと思いながら、布団の中に潜り込みました。
すると、ドスンと私のお腹あたりに座られたような重さを感じました。
そうこうしているうちに、体が自由に動けなくなっていました。
それでも名前をまだまだ呼び続けられました。
なんだよこれは。そう思っていたら突然何もなかったように私を呼ぶ声がなくなりました。
なんとも言えない静寂につつまれています。
■すすりなく女性
まさにそのときです。
昼間さんざん遊んだ川から声が聞こえてくるのです。
その時は私は疑いもなくその川からの声だと理由はないのですが確信したものがありました。
その声は若い女性の声でした。
その女性は、私に向かってただただすすり泣いていました。
私はもう必死に眠ろう、眠ろうとしていつに間にか眠っていました。
■朝になって
明朝、友人たちにこの話をしたのですが、
誰もここにはいない友人の声や女性のすすり泣く声を聞いていないというのです。
では、私にだけ聞こえた声は一体なんだったのでしょうか。
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