これは約20年以上前、私が高校生の頃の出来事です。
ドライブが大好きな両親は休日によく私をドライブに連れて行ってくれました。
その日は山形県鶴岡市にある高舘山に行こうという話になりました。
そこは小高い山の頂上にテレビ塔と展望台とピクニック広場がある、
一見聞いただけではとても楽しそうな場所です。
高校生だった私はその場所に着くまで車の中でとても楽しみにしていました。
しかし、実際その場所の駐車場に着いたと例えようのない嫌な感じと恐怖感が私を襲い、
どうしても車から下車する事ができなくなってしまいました。
両親はそんな私をよそに、
「だったら車の中で待っているといいよ。私たちは展望台に登ってくるから15分くらいで戻るよ」
と言い残し、私を一人車に残し去ってゆきました。
両親が車から去った後、なすすべもなくぼんやりと展望台に向かってゆく両親の後ろ姿を見ていました。
そのとき高舘山展望台には私たちしか訪れている人はいませんでした。
展望台は螺旋階段を登っていく形の建物で、その壁は階段は筒の形をしておりました。
ですので、外からでも両親が階段を登っていく姿を確認することができました。
その時、私は登っていく両親よりも階段の上から下って来るあるひとつの人影を見ました。
おかしなことに両親の姿ははっきりと見えるのに、それはまさしく「影」のみでした。
階段はひとつしかないので、登っている両親は必ず下っていく「人間」とすれ違うはずです。
私は気になったので、両親が車に戻ってきたあとに
「誰かとすれ違ったか」と尋ねました。
しかし、答えは「自分たちしかいなかった。誰にもすれ違ってない」と…。
では私が見たあの階段を下る「影」は何だったのか。
答えは今でもわかりません。
後になって聞いたのですが、そこは地元では有名なミステリースポットで、自殺の名所。
螺旋階段で自殺もあったという事です。
私は霊感のある方ではありませんが、あのときの例えようのない恐怖は今でも忘れることはできません。